写真の後ろの衣類も彼の手作り |
話のいくつもの箇所に心惹かれるところがあったが、今でも印象深く思われるのは、彼が、長距離を一人で歩いているうちに、次第に「本当に必要なものは何か」を突き詰めて考えるようになって、既成の商品からいらない部分を削ぎ落とし、さらに進めて、自分で作るようになったと言っていたことである。会場には、ザック、コンロ、ターフなどの自作の道具類が展示してあった。いずれも、徹底的に考え抜かれたシンプルさである。
彼にとって、この旅は、ある意味で自分の生きる力を試す機会でもあった。PCT,CDTぐらいまでは、ほぼ順調に歩けたので自信も湧いてきたようだ。しかし、最後の旅であるATを終える頃、これまでに歩くための道具は自作できたが、結局、食料はヒッチハイクして町に出て、他人や大企業が作った商品に頼らざるを得ないことに気がついた。そして、すべての旅が終わって帰国するなり、自給自足を目指す農家を訪ね歩いて、ついに八郷の『暮らしの実験室』にたどり着いたという。彼は言う、「今あるのも、旅の続きである」と。
そう言う意味では、大企業が作った過剰な商品に囲まれて、大量消費を是とする都会生活にウンザリして、質的に豊かな暮らしを自分自身の手で育て守ることを目指す若者が集まって来る『やさと』に、彼が来たのは何か必然的なものを感じる。
1 件のコメント:
アメリカ3大長距離トレイルの合計距離が間違っていました。正確には、Pacific Crest Trail (4261km), Continental Divide Trail (4500km), Appalachian Trail(3510lm それに International Appalachian Tail(1100km)の合計 約 13,371km です。訂正します。
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