2017年5月9日

オガタマノキ(招霊木)の花が咲いた


 
 先ほど、自宅から山小屋に戻ったら、庭に甘い香りが漂っていた。僕の大好きな樹木であるオガタマノキ(もっとも、これは中国原産のカラタネオガタマだが)が開花したのだ。冬の寒い時でも、深緑の葉をつけ、5月ごろにホオノキに似たクリーム色の小さな花を咲かす。すると、あたりがバナナのような甘い香りに包まれる。

 オガタマノキは、漢字だと「招霊木」と書いて、日本人にとっては、サカキやツバキやシキミなどと同じく「聖なる木」である。どうも日本人は、常緑広葉樹の葉っぱが肉厚で表面がテカテカ艶のある樹木に神秘的な感情を持つらしい。やはり、遠い遠い祖先の地への郷愁があるのだろうか。

 日本神話では、天照大神が天岩戸に御隠れになった際に、天鈿女命がその前でストリップを披露して神々を笑わせたとき、手にして踊ったのが、この木の枝だという。彼女のストリップも、古代のシャーマンの神託に原型があり、巫女たちが神と共に「笑ひゑらぐ」姿であるという説(谷川健一)もある。「招霊」とは、お盆に祖先の霊をあの世から招くことである。どうやら、オガタマノキは、はるか遠い民族の記憶や隠れた神霊を呼び出すのには効果がある木のようだ。「バナナの香り」なんて言うのは軽薄すぎるように思えてくる。身近なところでは、一円硬貨の図案にもなっている(そうだ)。今度、しげしげと一円玉を眺めてほしい(笑)。


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